イベント開催中の緊急事態。その瞬間、主催者の適切なアナウンスが参加者の命を守ります。本記事では、様々な緊急事態に即座に対応できる、実践的なアナウンステンプレートを場面別に詳しくご紹介します。印刷して現場に常備し、いざという時に備えましょう。
緊急アナウンスの基本原則
5つの鉄則
緊急時のアナウンスは、以下の5つの原則を必ず守ってください。
-
冷静な口調を保つ
- パニックを誘発しない落ち着いた声
- ゆっくり、はっきりと話す
- 声の震えを抑える
-
簡潔で明確な指示
- 長い説明は避ける
- 具体的な行動を指示
- 専門用語を使わない
-
繰り返しアナウンス
- 最低3回は同じ内容を繰り返す
- 30秒~1分間隔で実施
- 重要な指示は何度でも
-
現在地の明確化
- 「○○会場」「○○ステージ前」など
- 避難経路を具体的に示す
- 目印となる建物や看板を活用
-
安心感の提供
- 「スタッフが誘導します」
- 「安全を確保しています」
- 「落ち着いて行動してください」
アナウンスの構成
効果的な緊急アナウンスは、以下の構成で行います。
【注意喚起】→【状況説明】→【具体的指示】→【安心提供】→【繰り返し】
地震発生時のアナウンステンプレート
揺れている最中(緊急地震速報~揺れの最中)
【即座にアナウンス】
「地震です。地震です。
その場でしゃがんで、頭を守ってください。
慌てて動かないでください。
落下物に注意してください。
ステージから離れてください。
看板や照明の下から離れてください。
スタッフの指示に従ってください。
落ち着いて行動してください。」
(30秒ごとに繰り返す)
揺れが収まった直後
【揺れが収まってから30秒以内】
「ただいま地震がありました。
皆様、お怪我はございませんか。
現在、安全確認を行っています。
その場で待機してください。
勝手に移動しないでください。
スタッフが安全を確認しています。
避難の必要がある場合は、改めてご案内します。
落ち着いて、周りの方と声を掛け合ってください。
お怪我をされた方は、近くのスタッフにお声がけください。」
避難が必要な場合
【安全確認後】
「皆様にお知らせします。
安全確保のため、会場から避難していただきます。
スタッフの誘導に従って、落ち着いて移動してください。
走らないでください。押さないでください。
【具体的な避難経路を指示】
正面ゲートの方は、○○方面へ
東ゲートの方は、△△広場へ
西ゲートの方は、□□駐車場へ
エレベーターは使用できません。
階段を利用してください。
お子様連れの方、お身体の不自由な方を優先してください。
スタッフがご案内いたします。」
火災・煙発生時のアナウンステンプレート
初期対応(火災報知器作動時)
【確認中の第一報】
「お客様にお知らせします。
ただいま、火災報知器が作動しました。
現在、確認を行っております。
念のため、非常口の位置をご確認ください。
お手回り品をまとめて、いつでも移動できる準備をお願いします。
詳細が分かり次第、お知らせいたします。
それまでその場でお待ちください。」
火災確認・避難開始
【火災確認後・即座に】
「緊急放送です。緊急放送です。
○○エリアで火災が発生しました。
直ちに避難してください。
煙を吸わないよう、姿勢を低くしてください。
ハンカチやタオルで口と鼻を覆ってください。
【エリア別避難指示】
ステージ前の方:正面ゲートへ
飲食エリアの方:東ゲートへ
物販エリアの方:西ゲートへ
エレベーターは絶対に使用しないでください。
落ち着いて、速やかに避難してください。
スタッフの誘導に従ってください。」
煙が充満している場合
【追加アナウンス】
「煙が発生しています。
姿勢を低くして避難してください。
床に近いところほど、空気があります。
壁に手をついて進んでください。
前の人と離れないようにしてください。
緑色の誘導灯が避難口です。
落ち着いて、ゆっくり進んでください。」
急病人・負傷者発生時のアナウンステンプレート
医療スタッフ要請
【冷静に、明確に】
「スタッフの方にお願いします。
○○エリア(具体的な場所)で、急病人が発生しました。
医療スタッフの方、看護師の方、医師の方がいらっしゃいましたら、
至急○○エリアまでお越しください。
他のお客様は、その場でお待ちください。
救急隊が到着するまで、通路を確保してください。」
周囲への協力要請
【スペース確保が必要な場合】
「○○エリア付近のお客様にお願いします。
急病人の救護のため、スペースを空けてください。
後ろに下がってください。
通路を確保してください。
救急隊が通ります。道を空けてください。
他のお客様は、通常通りイベントをお楽しみください。
ご協力ありがとうございます。」
AED使用時
【緊急度:最高】
「緊急のお願いです。
○○エリアでAEDが必要です。
最寄りのAEDは△△にあります。
スタッフの方、至急AEDを持ってきてください。
周りの方は場所を空けてください。
救命処置を行います。」
天候悪化時のアナウンステンプレート
雷注意報発令時
【警戒レベル:中】
「お客様にお知らせします。
雷注意報が発令されました。
金属類のアクセサリーにご注意ください。
高い場所から離れてください。
木の下は避けてください。
建物内への避難準備をお願いします。
今後の気象情報に注意してください。」
突風・強風警報時
【警戒レベル:高】
「強風警報が発令されました。
テントや看板が飛ぶ危険があります。
飛ばされやすい物はしっかりと持ってください。
テント下から離れてください。
倒れやすい物から距離を取ってください。
安全な建物内へ移動してください。
スタッフの誘導に従ってください。」
大雨・冠水の恐れ
【避難準備情報】
「大雨警報が発令されました。
会場周辺で冠水の恐れがあります。
低い場所にいる方は、高い場所へ移動してください。
車でお越しの方は、車両の移動をご検討ください。
【具体的な避難場所】
屋根のある○○へ移動してください。
△△建物の2階以上へ避難してください。
最新の気象情報をお伝えします。
落ち着いて行動してください。」
不審者・不審物発見時のアナウンステンプレート
不審物発見時(パニック防止重視)
【慎重に、曖昧に】
「お客様にお知らせします。
○○エリアで確認作業を行います。
念のため、○○エリアから離れてください。
他のエリアでお楽しみください。
スタッフが確認しております。
ご協力をお願いいたします。」
【絶対に「爆発物」「危険物」などの言葉は使わない】
不審者情報(冷静な対応)
【スタッフ向け符号放送】
「スタッフコード10-10。
○○エリアでスタッフコード10-10。
担当者は至急対応してください。」
【一般向け】
「○○エリアは現在、入場を制限しております。
他のエリアをご利用ください。」
停電・設備トラブル時のアナウンステンプレート
停電発生時
【即座に・大声で】
「停電が発生しました。
その場で動かないでください。
非常灯が点灯します。
目が慣れるまで、その場でお待ちください。
スマートフォンのライトを点けてください。
足元に注意してください。
復旧作業を行っています。
しばらくお待ちください。」
音響設備トラブル
【拡声器・メガホン使用】
「音響設備にトラブルが発生しました。
現在、復旧作業中です。
イベントは一時中断いたします。
その場でお待ちください。
○分後に状況をお知らせします。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
群集事故防止のためのアナウンステンプレート
混雑緩和の呼びかけ
【予防的アナウンス】
「○○エリアが大変混雑しています。
後ろの方、下がってください。
前に押さないでください。
一歩下がってください。
隣の人との間隔を空けてください。
押し合わないでください。
ゆっくり移動してください。
スタッフが誘導いたします。」
将棋倒し防止
【緊急度:最高】
「止まってください!止まってください!
これ以上前に進まないでください!
後ろの方、下がってください!
押さないでください!
倒れた人がいます!
すぐに起こしてください!
深呼吸してください!
落ち着いてください!」
入場規制の案内
【事前告知】
「○○エリアは満員のため、入場を制限します。
しばらくお待ちください。
【代替案内】
△△エリアは空いています。
□□でもご覧いただけます。
整理券を配布いたします。
順番にご案内いたします。
お待ちいただく間、○○でお楽しみください。」
イベント中断・中止時のアナウンステンプレート
一時中断の案内
【理由を明確に】
「お客様にお知らせします。
○○(具体的理由)のため、
イベントを一時中断いたします。
【時間の目安】
約○○分後に再開予定です。
詳細が決まり次第、お知らせします。
その場でお待ちいただくか、
○○エリアで休憩していただけます。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
中止決定の案内
【丁寧に、申し訳なく】
「大変申し訳ございません。
○○(具体的理由)により、
本日のイベントは中止とさせていただきます。
【払い戻し情報】
チケットの払い戻しについては、
公式ウェブサイトでご案内いたします。
チケットは必ず保管してください。
【退場案内】
混雑を避けるため、エリアごとに退場していただきます。
○○エリアの方から順にお願いします。
安全にお帰りいただくため、
ご協力をお願いいたします。
本日はご来場ありがとうございました。」
避難誘導時のアナウンステンプレート
段階的避難の誘導
【エリアごとに順次】
「避難を開始します。
エリアごとに順番にご案内します。
最初に、○○エリアの方。
△△出口へ向かってください。
次に、□□エリアの方。
××出口へ向かってください。
あわてないでください。
全員が安全に避難できます。
お子様の手を離さないでください。
お年寄りに声をかけてください。
スタッフが最後まで誘導します。」
避難完了確認
【最終確認】
「○○エリアの避難確認をします。
まだ○○エリアに残っている方はいませんか。
声を出してください。
手を挙げてください。
スタッフが確認に回ります。
トイレも確認してください。
全員の避難を確認してから、
スタッフも避難します。」
効果的なアナウンスのための10のポイント
1. 声のトーンと速度
理想的な話し方
- 通常の1.5倍ゆっくり話す
- 一文ごとに1秒の間を取る
- 語尾を下げて落ち着きを演出
- 声の高さを一定に保つ
2. 言葉の選び方
使うべき言葉
- 「お願いします」(命令形を避ける)
- 「○○してください」(具体的指示)
- 「安全のため」(理由を添える)
- 「ご協力ありがとうございます」(感謝)
避けるべき言葉
- 「危険」「パニック」「大変」
- 「急いで」「早く」(焦りを誘発)
- 「たぶん」「かもしれない」(不確実)
- 専門用語、略語
3. 情報の優先順位
1. 何が起きているか(状況)
2. 何をすべきか(指示)
3. なぜそうするのか(理由)
4. いつまでか(時間)
5. どこでか(場所)
4. 繰り返しの技術
効果的な繰り返し方
- 重要な指示は3回繰り返す
- 表現を少しずつ変える
- 間隔を30秒~1分空ける
- 最後に要約を入れる
5. 多様な参加者への配慮
特に配慮すべき方々
- 子ども:優しい言葉で
- 高齢者:ゆっくり、大きな声で
- 外国人:簡単な日本語+英語
- 障がい者:具体的なサポート案内
6. マイクの使い方
適切な使用方法
- 口から10cm離す
- まっすぐ持つ(斜めにしない)
- 息を吹きかけない
- ハウリング時は音量を下げる
7. 事前シミュレーション
練習すべきこと
- 各テンプレートの音読
- 時間を計測(1分以内が理想)
- 録音して聞き返す
- チームでロールプレイング
8. 現場での判断基準
アナウンスのタイミング
- 異常発見から30秒以内に第一報
- 情報更新は2~3分ごと
- 沈黙が3分続かないよう注意
- 終了時は明確に伝える
9. 記録の重要性
記録すべき内容
- アナウンス開始時刻
- 内容の要約
- 参加者の反応
- 改善点のメモ
10. チーム連携
役割分担
- アナウンサー:放送担当
- 情報収集係:現場確認
- 記録係:内容と時間記録
- 判断責任者:内容承認
多言語対応の基本フレーズ
英語での基本アナウンス
地震/Earthquake
"This is an earthquake.
Stay calm and protect your head.
Follow staff instructions."
避難/Evacuation
"Please evacuate calmly.
Do not run. Do not push.
Follow the staff to the exit."
中止/Cancellation
"The event is cancelled.
We apologize for the inconvenience.
Please leave the venue safely."
中国語での基本アナウンス
地震/地震
"发生地震了。
请保持冷静,保护头部。
请听从工作人员的指示。"
避難/疏散
"请冷静疏散。
不要奔跑,不要推挤。
请跟随工作人员前往出口。"
韓国語での基本アナウンス
地震/지진
"지진이 발생했습니다.
침착하게 머리를 보호하세요.
직원의 안내에 따라주세요."
避難/대피
"침착하게 대피해 주세요.
뛰지 마세요. 밀지 마세요.
직원을 따라 출구로 이동하세요."
ピクトグラムの活用
言葉が通じない場合の視覚的指示:
- 🚶 歩いて移動
- 🏃 走らない
- 👥 集合場所
- 🚪 非常口
- ⛔ 立入禁止
- ✋ 停止
- 📢 アナウンス中
事前準備チェックリスト
設備・機材の準備
必須設備
- 非常用放送設備の動作確認
- 予備マイク・メガホン(3台以上)
- 充電式拡声器
- 予備電池
- 非常用電源
通信機器
- 無線機(スタッフ全員分)
- 予備無線機(故障対応用)
- 充電器
- イヤホンマイク
文書の準備
現場常備資料
- アナウンステンプレート印刷版
- 避難経路図
- 緊急連絡先リスト
- 多言語対応表
- タイムスケジュール
防水対策
- クリアファイル
- ラミネート加工
- 予備の印刷物
スタッフ教育
事前研修項目
- アナウンステンプレートの読み合わせ
- 機材の使用方法
- 役割分担の確認
- 緊急時の判断基準
- 実地シミュレーション
当日ブリーフィング
- 天候・参加者数の確認
- 特別な配慮が必要な参加者の情報
- 避難場所の最終確認
- 通信テスト
- 緊急時の集合場所
関係機関との連携
事前調整
- 消防署への届出
- 警察署への届出
- 医療機関との連携
- 自治体との協議
- 近隣施設への通知
緊急連絡先の確認
- 119番通報の担当者
- 110番通報の担当者
- 医療機関の直通番号
- 責任者の携帯番号
- 本部との連絡方法
会場の安全確認
避難経路の確保
- 非常口の解錠確認
- 通路幅の確保(最低1.2m)
- 障害物の撤去
- 照明の確認
- 誘導標識の設置
危険箇所の把握
- 段差・階段の位置
- 滑りやすい場所
- 狭い通路
- 行き止まり
- 危険物の位置
まとめ
緊急時のアナウンスは、参加者の生命を守る最後の砦です。このテンプレート集を活用し、定期的な訓練を実施することで、いざという時に適切な対応ができるようになります。
重要なポイントの再確認
- 事前準備が8割 - テンプレートの準備と訓練が成否を分ける
- 冷静さが伝染する - アナウンスする側の落ち着きが参加者に伝わる
- 具体的指示が命を救う - 曖昧な表現は混乱を招く
- 繰り返しが理解を生む - 1回では伝わらないことを前提に
- チームワークが力になる - 一人で抱え込まず、役割分担を
最後に
緊急事態は起きないことが一番ですが、「備えあれば憂いなし」です。このテンプレート集を印刷し、スタッフ全員で共有してください。定期的な読み合わせや訓練を行い、いざという時に自然に言葉が出るようにしておきましょう。
参加者の安全は、主催者の最大の責任です。適切な準備と訓練により、安全で楽しいイベントを実現できることを願っています。
緊急時の合言葉 「落ち着いて、ゆっくり、確実に」
この記事が、皆様のイベント運営の一助となれば幸いです。安全第一で、素晴らしいイベントを創り上げてください。
